ここ数年のいわゆる収集を決定づけたトレンドが減少していくことかもしれないということだ。

「どちらかといえば、トレンドが沈静化しつつあるのは喜ばしいことです」と、Moncao Legendsを運営する(そして、私たちのお気に入りのフィフティ ファゾムズのコレクターでもある)アダム・ビクター(Adam Victor)氏は言う。この数年、誰もが同じような現行の時計を追いかけ、それこそ先日話題になったティファニー×ナイキのコラボどころではない熱狂ぶりだったわけだが、ここにきて人々は何か違うものを求めるようになった。FOMO(取り残される恐怖)は、もはや存在しない。パテックのRef.5711の価格は上がるどころか、下がる一方なので、今焦って手に入れる必要もない。

パテックフィリップ ティファニーブルー 「ノーチラス」Ref.5711/1A-018

「二次流通、一次流通であれ、市場の真の健全性に仕掛けなどないのです」とビクター氏は付け加えた。「限定モデル、マーケティング、独占販売、ダイヤルカラーを変えるなどといった小手先はもう通用しないのです。本質的なおもしろさを追求することこそが重要です」。そして、その素晴らしい点は何か? 自分とっての本質的なおもしろさが他人にとって、例えば時計コレクターでコメディアンのケヴィン・ハートにとっての本質的なおもしろさとは異なるという真理に皆が目覚めることである。

今年のマイアミビーチ アンティークショーでは、昨年よりもバラエティに富んだ展示が数多く見られた。もちろんスポーツウォッチはまだあったものの、あらゆるブランドのヴィンテージやネオヴィンテージが人々を熱狂させていた(現行の時計の話題性は多少なりともなくなっていたようだ)。「あそこのパルミジャーニ見た?」、「あぁ、でもここのチューダーサブのフランス海軍モデルは見たかい?」といった掛け合いも見かけた。確かに、最高級のヴィンテージロレックスの取引がいちばん多かったかもしれないが、それ以上にほかのブランドの話題が多かった。パテックとロレックスのヴィンテージは引き続き安定しているが、人々はこれらの有望株以外の時計を発見し(あるいは再発見し)、より多くのブランド、より多くの年代にわたるバックカタログを深く掘り下げることに興奮しているように見受けられた。

多くの時計にとって今年は過去数年のように価格が上昇することはないだろう。そのため、人々は“トレンドを追いかける”必要性を感じないだろう。ゆっくりとひと息ついて、自分にとって実際におもしろいのはどんな時計なのかを考える時間があるのだ。それは私のでも、ケビン・ハートのでもなく、ミートアップで知り合って嫉妬を感じたことを認めたくない、あの人のでもないだろう。

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